
開発 :metalogiq(公式サイト)
ランク:S
絶望が深ければ深いほど希望は強く輝く。
※後半ネタバレ有り
攻略順
<実攻略順>
BAD END → 帰還ルート → 残留ルート
<推奨攻略順>
好みで問題ありませんが、悩む場合は上記順を推奨します。
※直前の選択肢で特殊任務を選ぶと帰還ルートの選択肢が出現しないので注意。
感想(概要)
〇リアリティすら感じる「消耗」設定
尊厳を奪うために「異常」を納得させていく過程の説得力が凄まじいです。実際のブラック企業を参考にしたと言われれば、納得してしまうほど洗脳プロセスが良く出来ています。
〇印象に残る個性的なキャラクター達
立ち絵があるキャラは全員個性的で、見事にキャラが立っています。特に主人公と同じG14のメンバーは思い入れが強いですね。彼女らの友情は、この地獄における数少ない安らぎでした。
〇人間賛美
おぞましい世界が舞台ですが、本作が描いたものは間違いなく人間賛美という希望です。「希望を与えるためにまず絶望を与える」という構成は良くありますが、ここまで徹底している作品は稀です。
△エッチシーンの実用性
大部分が主人公のみのりのシーンなので凌辱適正があっても好みでないと使いにくいかもしれません。ですがエッチシーンであると同時に魔法少女の戦いでもあるので、その勇士を目に焼き付けてほしい。
まとめ
評価が良いのは知っていましたが、予想の数倍良くて大満足です。上っ面はエイリアンに犯される魔法少女ものなのに、内容はこれでもかというほど複雑な人間の悪意と善意が描かれています。
それにしても…絶望に絶望を重ねた後の希望という名のカタルシスは極上です。やはり希望が感じられる作品いいですね…改めてそれを実感させてくれた本作にはお礼を言います。
※以下はネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)
◼︎特殊戦技兵装実演(みのり)

このシーンを見ている間中ガタガタ震えていました。だって反抗者の吊るし上げそのものなんですものこれ…。同僚からの失望といい妙にリアリティを感じるせいで興奮よりも恐怖が勝ってしまいます。
それでもみのりさん的には他人に危害がないので、メンタルダメージ少ないんでしょうね。思えばこの時くらいからですかね、彼女の心の強さを素直に凄いと思うようになったのは。
■ルパート・キニスン

地獄よりも劣悪なカテドラルにおいて、数少ない救いの一つである我らが司令。ダンディボイスに不屈の意志、そして「消耗」と口にしながらも消しきれない優しさ。イリューシャが惚れるのも納得な漢の中の漢です。
そんな彼がイリューシャを”専用性処理装置”にすると告げたとき本気でショックでした。すぐにブラフだと分かってホッとしましたが、いやはや心臓に悪かったですよ…分岐前で一番絶望した場面です。
感想(地球帰還ルート)
■麗残雪(レイ・ツァンチェン)

このルートの主役。黒のゴシックドレスにテディベアとファンシーな恰好ながら、友のために戦う義に厚い素敵な女性。最初の三人の中では一番好きです。
そんな彼女が実験台にされカテドラルよりも苛烈な辱めに姿を見せられた時は、「もうC.C.に負けろよ人類よぉ!」と思うレベルで絶望していましたが、麗残雪という特殊戦技兵の強さを舐めていましたね。その後の暴露劇場は実に爽快でした。
最後に最初の特殊戦技兵三人が集うスチルは本作で一番好きなんですよね。リゼットの「ヒーローだから最終回がある」という言葉も相まってグッときました。
この三人がわだかまりを解消して逝けたのだと思うと、なんだか無性に嬉しく感じます。最優の特殊戦技兵というべき見事な生き様でしたよお嬢。
■カテドラルはどこにでもある

このルートで一番印象に残った言葉です。あれほど人外魔境に見えたカテドラルも、“人が人を消費するどこにでもある仕組み”でしかなかったんですね…
誰もが誰かを消費し、誰かに消費される負のスパイラルの中にいる。まるで人の業を突きつけられているようで、何とも言えない空虚な気持ちになりました…
だからこそG14と最初の特殊戦技兵の友情は“かけがえがのないものに”感じます。このルートには『友情とは損得がないものである』。そんなメッセージが込められているように思えます。
感想(基地残留ルート)
個人的にはこのルートを後回して良かったと思っています。友情が際立つ帰還ルートの後にやることで、より一層濃い絶望を味わうことができるからです。
■対宝石泥棒

しょっぱなから他のルートとの格の違いを見せつけてくれます。意図的な愚策により、多数の特殊戦技兵とキニスン司令を失う。これまでとは明らかに「消耗」のレベルが違う凄まじい展開です。
挙句の果てに莫大な戦果を挙げたにもかかわらず、C.C.化したことを理由に尊厳破壊というのも生温い実験標本扱い。これでよく心を保てるものです…本当にみのりさんの心の強さは凄い。
この戦闘派手にキルケも狂ってるんですよね。宝石泥棒の対策が「リゼットがなんとかする」は流石に妄信が過ぎます。まぁ実際なんとかしちゃうから、リゼットは英雄なんでしょうね。
ですがずっとアレの近くにいれば妄信するのも仕方ない気もしますね…英雄の功罪ってやつなんでしょうかね。
■イリューシャ・ペトロヴナ

言い方は少しキツイですが友達想いな聡く美しいG14の主砲。冷酷なようで情に弱い性格ですから、きっと地球でも友達のためにババを引いてたんでしょうね。
私は心のどこで油断していました。なんだかんだ言ってもメインの三人は生き残るだろうと。その幻想を死神(英雄)に木っ端みじんにされたときのショックは今でも覚えています…
唯一の救いがあるとすれば、キニスン司令の命令で彼女が裏切るような展開がなかったことでしょうか。多分その展開があったら私の心ペチャンコになってましたね。
それにしても、C.C.化したイリューシャはとんでもなく美しいですねぇ…
■如月 七虹

控えめに言って頭は緩いですが、二人に変わって本音を言ってくれるおかげで、友情を強められたのも確かです。心身ともにG14の盾といって差し支えない存在。笠井悟さえいなければ…
正直なところ七虹の気持ちも分かるんですよ。彼女はもう笠井悟のために動くという在り方しかないんですよ。キレイに言えば「惚れた弱み」なんでしょうね…
イリューシャもキニスンに言われたら同じことをしたでしょうし、みのりさんも光臣に言われたら迷ったでしょうね。だから七虹のこと嫌いになれないんですよ。やっぱり消えちゃうのは悲しいんですよ…
だからこそ悟の頭をトマトみてぇに吹っ飛ばしたシーンは最高でしたね!!! このクズの死を見れるのも、残留ルートを後にするメリットですよ。
■バーゲンホルム・光臣

正直おどろきました帰還ルートとはまるで別人じゃないですか。文字通りすべてを捨てて愛したい女の元に向かえるその姿は漢と呼ぶにふさわしいです。
ずっとブラックな凌辱ばかり見せられたせいか、彼らの初心な純愛はあまりにも尊い。エッチシーンを見て安堵して泣くなんて経験は初めてです。
■飯塚みのり

本作の主人公にして百戦不撓の精神を宿す魔法少女。どれだけ尊厳を破壊され正しさを曲げず、たとえ折れても誰かのためならば立ち上がれる正義の体現者。本作で一番好きなキャラクターです。
友に裏切られても、人でなくなっても、家畜に貶められても、一度たりとも正しさを曲げなかったその精神力は驚嘆に値します。
砕かれてない部分を探す方が難しいレベルの壮絶極まりない仕打ちを受けながら、何度でも立ち上がるその勇士に惚れざるを得ません。
本作は人間の悪意に満ちていますが、最後は必ず彼女の正しさが勝っている。人は弱いのではなく強いのだと証明してみせた彼女に惜しみない称賛を送ります。
天使の理:死人に口あり
人が行う「消耗」とC.C.が行う「融合」は、消費と生殖という反対の意味を持ちながらも、他者を糧とするという点では同一です。種として遠いはずの二者にこのような共通点があるのは面白いです。
生命とは存在する限り、他者の尊厳を「消耗」する存在なのかもしれませんね。そうなれば「消耗」は逃れることのできない「生命の原罪」とすら言えます。
だからこそ天使が追加した理である「死者による告発」は重い意味を持ちます。本来「消耗」されて終わるだけだった「ちいさきもの」が、何度でも戦うことができるようになるのですから。
これは強烈な楔です。正しくない弱きものがそれに耐えきれる訳がありません。耐えられるのは自分の正しさを信じられる強きものだけです。
その後の人類文明の発達を考えれば、人は「消耗」という原罪を克服し、より強い「おおきなもの」になれたということなのでしょうね。
悪意に打ち勝つ人の強さを描いた人間賛美こそが、本作の本質だと私は感じました。心地良い読後感も含め実に見事な構成です。ファンタスティック!最上の誉め言葉を本作に送ります。
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