プレイ中:幻想牢獄のカレイドスコープ2

旭光のマリアージュ 感想

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制作 :ensemble 
ランク:A 
人が人であるために重要なことは”自由であること”ただそれだけである。
※後半ネタバレあり。
<実攻略順>
リア → クロエ → アルフィーネ
 
<推奨攻略順>
上記順番で固定です。
 

感想(概要)

〇テーマに対して真摯なシナリオ
『復讐』というテーマに対して真摯に向き合っている作品だと感じました。三ルート三様の異なる方向から『復讐』に対する話が展開されています。この部分に関しては期待以上でした。
 
キャラクターどうしの繋がり合い
『家族』という形でキャラどうしが繋がっているのですが、これがとても良かったです。強い関係性であることが自然に見えましたし、感情面での共感もしやすかったです。
 
△苦悩・葛藤描写の欠如
そのキャラがその思考に至るまでの苦悩や葛藤というものがほぼ無かったので、感情移入がしにくかったのが残念です。特に主人公にはもう少しあった方が没入しやすかったのでは?と思いました。
 
×戦闘があまり面白くない
盛り上がりどころが無いわけではありません。ただ比喩表現の連発で状況が分かりにくく、厨二マインドへの刺激も弱いです。次回があるならこの部分の熱量を上げて欲しいです。
 

まとめ

聞こえてくる評判は賛否両論でしたが、個人的には好きになれた作品です。どのルートもちゃんと『復讐』がテーマになっているのがとても良いです。『復讐』に対するライターなりの哲学が見えたのも好印象です。
 
ただ深堀すると疑問に思うところは正直あります。細部に神はいません。その辺がもっと丁寧ならワンランク上がれるポテンシャルはあったと思うので「惜しい!」という気持ちが強い作品でした。
 
※以下はネタバレ有感想です。
 
 
 
 
 
 
 

感想(ネタバレ有)

■リア(ルミアリア)

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底抜けのお人好しでとっても優しい『おかーさん』であり、好きな人の前では可愛らしく甘えてくれる『お嫁さん』でもある良妻賢母を体現した『旭光』の花嫁。
 
彼女が感情を強調するときに頻繁に使う「すごーく」という口癖が本当に好きなんですよ。和らな声色と相まって聞いていてとても安心します。そしてすごーく可愛い。
 
ぞんざいに扱われようとも、記憶を失おうとも、常に『家族』を想い、生涯で一度して他者を呪うことがなかったその魂の清らかさは本物です。作品を超えて今年で一番好きなヒロインです。
 
あぁ彼女を見ていると愛が儚いなど言い訳だということを実感できる。『真実の愛』が存在していると確信できる。それだけで本作をプレイした甲斐がありました。
 

<シナリオ>

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『復讐』を完遂する話として王道で奇麗な構成をしています。アンリエッタに復讐される”メリーバッドエンド”なのもいいですね。復讐の輪廻性をちゃんと理解っていてグッドです。

ただ、アラド交代直後はちょっとキツかったです。いきなり別人格が出てきて復讐を始めた時は「誰だよテメェ」って感情が強くてⅠ章終了までずっと困惑していました。

Ⅱ章頭で孤児院の真相がリア視点で描写されるので問題はないのですが、人格交代時に真相も見せてくれた方がアラドに感情移入できて良かったのになあとは感じました。

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比較的お約束で進むルートでしたが、アンリエッタ戦のメルの登場はインパクトが凄かったです。完全に意表をつかれたことも相まって心が熱くなるのを抑えきれませんでした。
 
最期にメルティと重なるのもいいんですよねぇここ…。殆どの箇所で過去回想を使った伏線が機能しているのが本作の良いところの一つですね。
 

■クロエ・ルーアン(クローシェ)

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控えめな性格の内に誰よりも強い心を秘めたこの世界最後の『魔法』到達者。そしてなにより、その才で『おとーさん』を10年間支え続けてきた『家族』の誇りたる『暁』の花嫁。
 
10年夜の闇を歩き続け、人として大切なものを削り、果てに化物になっても、最初に抱いた“守る”という想いだけは決して忘れなかった。抜け殻となっても生きる目標を失ったスレンの側に居続けた
 
歩んできた道に血塗られた罪があろうとも、彼女の強く一途な想いは尊ばれるものです。寒空の元で部屋の外で待ち続ける彼女を見たスレンと同じく思いを抱きました。“この子に報いたい”と。
 

<シナリオ>

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作中テーマのひとつ『無かったことにしてはいけない』を無力感という形で実感させられるとは思いもよりませんでした。「やりますね」と思ったのを今でも覚えています。
 
大切なのは“自分の意志に自由であること”であり『復讐』はあくまで手段に過ぎないというのは面白い着眼点だなと思いました。抜け殻どうしのスレンとクロエが共に支え合うことで、その結論に行きつくの流れが自然でとても良いです。
 
クローシェ=ケルヌンノス、10年の歩み、スレンの正体など印象に残っている箇所は多々ありますが、やはり一番は『妖精の花嫁』への覚醒ですね。貯めに貯めただけあってカタルシスが凄まじかったです。
 
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ただ、その後のオンベルト戦はどうしても彼の心情描写が全然ないのが痛かったですね。彼なりの10数年の苦悩がもっとあれば、過去しか見ていないオンベルトと未来を見ているクローシェの対比もより様になった思うんですけどね…
 
でも一番ダメなところは花嫁クローシェに必殺技がないことです。いやこれマジで言ってますからね。必殺技を叫びながら時間障壁を破壊してくれればそれだけ満足感でますから。
 
それが無いせいで決めシーンのカタルシスが弱くなってますもん。勿体ないですよ。
 

■アルフィーネ・ミディール(アリィ)

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生きるために血統が必要な『治癒魔法』すら取得し、10年間針の筵で血のにじむ努力をし続けた王女となった末っ子。そして唯一生きていてくれた『家族』の救いである『黄昏』の花嫁。
 
フィーネの設定はよく練られていると思います。『根源』が『復讐』の源と分かったときは正直肩透かしに感じましたが、その後の彼女の独白で印象が大きく変わりました
 
生きるために自分以外に嘘をつき続けなければならないのに、彼女生来の善性がそんな自分を嫌悪し許せない。自分の意志を殺し続けねばならない境遇に耐えられない。
 
クロエルートでも描写されている、“自分の意思に自由であること”の重要性を補強しているのですよね。真逆のフィーネの状況を当てることで説得力を上げるこの手は妙手です。
 
実際にフィーネに幸せになってほしいって思っちゃいましたもん。
 

<シナリオ>

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黒幕であるナーダと決着がつき『家族』全員の疑念が晴れるのでグランドルートなんだと思います。聖王→ナーダから廻ってきた復讐の連鎖を断つ存在が王家の血を持たない王女というのは中々趣深いです。

ただ、孤児院の惨劇が起こった理由を知ろうとするのがこのルートだけってのはどうも納得がいかないですね。10年あって一度も疑問に思わなかったのは無理筋です。過去回想であえて考えないようにするシーンが1個でもあれば違ったんですけどね…

ですがそのネガティブを補って余りあるほど本作を高く評価している点があります。それはどのルートでも必ず最後にスレン達『死人』が消滅する。そこに宿るライターの哲学です。

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感情由来である復讐を無くすことはできない。だからこそ復讐の連鎖を止めるために、いかなる理由があろうとも復讐を成した側は消えなくてはならない。復讐を成し遂げて良いのは死者のみである。
 
だがそれでも彼らがいたことを『無かったことにしてはいけない』残されたもの中にだけ死者は在れるのだから。そしてその者が死者から受け継ぐのは『復讐』ではなく『愛』であるべきである。
 
生者として生き残ったアンリエッタが孤児院の『家族』から受け継いだのは『復讐』ではなく『愛』。彼女は『愛』を巡らせるために実母と同じく『家族』を作る。
 
『復讐』で始まった物語が『愛』で終わる。実に美しく人にとって救いある良い物語でした。
 

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