プレイ中:幻想牢獄のカレイドスコープ2

飢えた子羊 感想

2593370_247.jpg
制作 :ZerocreationGame 
ランク:S 

飢えたものを救う行為は無条件で”善”である。
※後半ネタバレ有。

<実攻略順>
BADエンド各種 → 好感度エンド(高 → 低 → 中) → 真エンド(誅 → 闖)
 
<推奨攻略順>

BADエンド各種 → 好感度エンド(低 → 中 → 高) → 真エンド(誅 → 闖)

好感度判定

手動で確認したものですが分岐条件を記載します。
好感度が上がる選択肢は、選択後の差分が長い方です。
 
分岐条件(〇:+選択、×:非+選択)

・低エンド:15章×
・中エンド:14章以前で×2個以上、15章〇
・高エンド:14章以前で×1個、15章〇
・真エンド:全て〇

感想(概要)

〇リアリティと緊迫感のある描写
飢饉の脅威、政治の腐敗、乱世の狂った倫理観。そのどれもが高いリアリティを誇っており、現実としか思えないほどの凄まじい緊迫感が作品に宿っていました。
 
〇少女に影響され変わっていく男

乱世の世で生きるために悪党になった男が、「商品」の少女に影響され変わっていく。展開自体は王道でありながらも描写が濃密であり、全ての謎が最後に繋がる構成は素晴らしかったです。

〇メッセージ性の高さ
強烈なインパクトの飢餓描写があり、その描写を通して強い思いを感じ取りました。その内容は決して今を生きる我々にも無関係なものではなく、この思いを受け取れただけでも本作をプレイした価値が十二分にあったと言い切れます。

△システム
バックログジャンプがないのは残念です。ですが変わりにフローチャートという至高の機能があるので苦ではありまんでした。おかげで好感度調整もやりやすかったです。

まとめ

紛れもない傑作です。中華製ということで侮っていましたが認識を改めねばなりませんね…。緻密な時代描写にメッセージ性、往年の名作と比較しても遜色ない個性と魅力を持った珠玉の一作です。
 
さらに近日のアップデートで日本語ボイス版が追加され、ヒロインの担当に「釘宮理恵」という生ける伝説が起用されています。正直作品に対する力の入れ様は異常のレベルです。
 
これほどの内容でありながら値段が1200円と破格中の破格なので、少しでも気になったらプレイすることをお勧めします。
 
※以下はネタバレ有感想です。
 
 
 
 
 
 

感想(ネタバレ有)

■良

2593370_503.jpg
天啓の大爆発という日本でいう”ヒロシマ”に匹敵する規模にもかかわらず、正体不明の大爆発から生き残った悪運の強い男。同時にすべてを失ったことで悪党にならざるを得なかった悲運の男。
 
この時代で女子供は殺さないとかいう異常な縛りプレイする辺り、明らかに悪党に向いてない男です。読んでる最中に「お前悪党やめろよ」と思った回数は片手をゆうに超えています。
 
そんな良様が年の割に異常に頭が回る小娘に絆されて、徐々に己の生き方に疑問を覚え、変わってく様を見るのは何とも楽しかったです。こういう感じに生き様に葛藤するからこそ、選択に”重み”が生まれるのですよね。
 
抜粋:第十一章
2593370_281.jpg
良視点において印象に残っている章が2つあるのですが、第十一章がその1つ目です。この章は良の心情変化の転換点として非常に良い構成をしています。
 
子羊達と一緒に影絵を楽しむことで”悪夢”から決別することができ、満穂に侠客という”夢”を語れた。もうこの時点でほとんど彼は狼ではないのですよね。“善”がよく強調されている章だと思います。
 
ですが最も秀逸なところは、この直後に父親がいなくなった穂の第三章が入る構成そのものです。この章は満穂にとっては因縁の起点とも言える章です。そういう意味ではどちらも己の起点に対する章と言えます。
 
“善”に傾むく良の”光”と反発するように、満穂を”復讐”へと誘う”闇”が深まる章を当てるこの構成は実にエクセレントです。
 
抜粋:第十三章
2つ目は第十三章です。この章は良視点ではもっとも重要な“善人”か”悪人”かを選ぶ『選択』の章であり、どちらの『選択』も非常に趣深いものになっています。
 

◆悪人の『選択』→ BADエンド「応報」

2593370_306.jpg
三人の”子羊”を切り捨て因果応報の報いを受ける”狼”の『選択』。このエンドの素晴らしいところは、念願の復讐を果たせたのに涙でぐちゃぐちゃの満穂の表情です。

復讐の怨嗟、良への失望、期待した自分への嫌悪。すべてが混じり合った複雑な心境が表れた見事な表情です。やはり激情を表にしたとき人はもっとも美しい顔をする。

他の好感度エンド同じく”雨の満穂”が夢に出ているので、好感度マイナスエンドと言えるかもしれませんね。

◆善人の『選択』→ 第十四章「贈り物」

2593370_364.jpg
三人の”友人”に出来うる限りの良い未来を提供し別れを告げる”良”の『選択』。友人達は良に料理を振舞、良は彼女達に別れの贈り物を贈る。こういうの”対等”って感じがしていいですよね。

そして何と言っても別れのスチルの切なさがいい…。良の贈り物が風と共に伴奏することで別れの哀愁を何倍にも際立たせています。別れに寂しさを見出せるのも“人間”になった証のように見えます。

■満穂

2593370_319.jpg
飢饉と悪性により家族すべてを失い、その家族を己の血肉に変えざるを得なかった、この時代では珍しくない不運の少女。同時に旅路で善人に恵まれ父の仇を知ることのできた悪運の強い女。
 
第三章でいきなり騙し打ちで殺しにきたのに、気が付くと何故かこの女がむちゃくちゃ可愛くて仕方なくなっている。演技、容姿、声をフルに武器にしてくる恐ろしい女です。だがそこもまた愛しい。

すべて知ったあとでは満穂の行動がすべて腑に落ちるようになっているのは本当によくできています。序章のみ1628年なっている叙述トリックも見事です。
 

しかし彼女を語る上で欠かせないのは第十五章の花火のスチルです。父の仇に好かれ、また自分もその仇を好いていることに気づいてしまった、彼女の愛憎が涙として表れている素晴らしい一枚です。

そんな彼女が『選択』をするのが、本作の好感度エンドになります。彼女の愛憎の変位を感じられるこの仕組みは、巧い手を考えたなと感心しました。

■好感度低エンド「無言」

2593370_338.jpg
自分では殺せないけど許せないから殺すねエンド。
 
自分の命と引き換えに極刑の罪を被せる恨みの強さを感じる結末ですが、これでも復讐の理由を教えているだけ「応報」より心を開いているのが分かります。
 

■好感度中エンド「逃げろ」

2593370_339.jpg
どうしても許せないから殺すけど、好きな気持ちも抑えられないから『選択』させてあげるねエンド。二人の終わりとして一番美しく全エンドの中で一番好きです。
 
お互いが目的を果たせて終われるこの結末のために、彼女がどれほど葛藤したか想像すると胸が熱くなります。こんなにも憎まれそして愛されているなんて羨ましいですね…。
 

■好感度高エンド「見えず」

2593370_326.jpg
好きな気持ちが強すぎてもう殺せないよぉ…エンド。二番目に好きなエンドです。奇麗に整えられた靴だけが残っているスチルが最高に印象に残っています。
 
この結末の趣深いところは「逃げろ」と違い満穂の真意が分からないところです。好感度が高くなったのに理解という意味では遠くなってしまった…このやるせなが堪らないです。
 

感想(真エンド)

■ともに死ぬ

2593370_356.jpg
二人で豚妖を誅殺し共に死ぬ奇麗なエンド。そう英雄のような理想的な終わり方をするこの結末はあまりにも奇麗すぎます。本作の締めとしてはもっと泥臭い方が好みです。
 

■ともに生きる

2593370_505.jpg
良が満穂の父を殺した罪は永劫消えません。その罪に向き合う方法があるとしたら、それは生涯その罪を背負って『生きる』ことだけです。これが良の誓約『満穂に命を貸す』ことです。
 
そして同じくらい、その罪を知る者が『生きている』ことも重要です。知る者がいなければ背負う者は存在しないことと同義なのですから。これが満穂の誓約『自害しない』ことです。
 
お互い誓約をかけ合い罪と向き合い『ともに生きる』エンド。これが本作の復讐に対する解答であり、私はその解答を支持します。細部に神が宿る見事な出来でした。
 

感想(メッセージ)

■”もう餓死者出ないように”とは?

2593370_363.jpg
ストーリーの感想に入れるとノイズになるため、あえて最後に回しましたが、間違いなく本作のテーマはこのメッセージです。
 
まずもって本作で一番印象に残ったのは満穂の過去編の飢餓描写です。天災と悪政を起因とし、読み進める度に凄惨な状況になっていく穂の過去はあまりにも強烈でした。
 
そしてもうひとつ強く印象に残っているものが第十五章の選択肢です。ここで説教で気持ちよくなる選択肢を選ぶと、これまでの選択関係なく好感度低となります。
 
逆にいままで好感度一切上げなくても施しの選択肢を選ぶと好感度中となります。つまりこの選択肢はそれほど重いものであり、同時に以下に記す作者のメッセージそのものなのです。
 
「飢えたものを救う行為は無条件で”善”である。」
 
これは日本が生んだ『正義の味方』である”アンパンマン”の理念そのものです。本作もまた同じメッセージ性を持っています。
 
最後のメッセージは「飢えに困ったことのない幸福者」に向けられたものであること、そしてあなたが飢えた誰かを助けてあげられる『善人』であればこれ以上に誇ることなど何もないということ、これだけは知っておいてください。
 
説教くさい文章で申し訳ないですが、とても大切なことなので記載させて頂きました。感想は以上となります。ここまで読んでくださりありがとうございました。

コメント

  1. >飢えたものを救う行為は無条件で”善”である。
    あの選択肢は単にシステムとユーザービリティの都合上あんな簡素な感じになっているものかと思ってましたが、確かに餓死しかけた満穂からするとあの行動がめちゃくちゃ重くとらえられるのはとても自然なことですね。
    勉強になりましたありがとうございます。

    余談ですが、舌が良に殺される所や満穂が舌に殺されかける所、わざわざ表情差分三枚くらい使って怯えた表情描いていたのは性癖なんだろうなって思いました。
    とってもいいと思いました。

    • 舌様コメントありがとうございます。
      2月よりブログ移行作業を他に依頼していたため、
      長らく返信が出来ず申し訳ありませんでした。

      >確かに餓死しかけた満穂からするとあの行動がめちゃくちゃ重くとらえられるのはとても自然なことですね。
      >勉強になりましたありがとうございます。
       ⇒こういう考え方が好きなので、ご参考になったのならでとても嬉しいです。
        
      >表情差分三枚くらい使って怯えた表情描いていたのは性癖なんだろうなって思いました。
      >とってもいいと思いました。
       ⇒同意です。いいですよね…
        次作も素敵な表情を期待しちゃっています。