プレイ中:幻想牢獄のカレイドスコープ2

カルタグラ ~ツキ狂イノ病~ 《REBIRTH FHD SIZE EDITION》 感想

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制作 :Innocent Grey 
ランク:A 
「妄執と狂気に至る愛」その謳い文句に偽りなし。
※後半はネタバレ有
<推奨攻略順>
その他 → 和菜 → サクラメント和菜 → サクラメント由良
※和菜ENDまでに他のENDを終了させることを推奨

感想(概要)

〇妄執と狂気に至る愛
これが大言壮語でもなんでもないのは恐れ入ります。このような極限の純愛を抱いたヒロインはそうそういません。感謝します。また一人記憶に刻まれるヒロインに出会えました。
 
〇緊張感と速度のある展開
怒涛の頻度でホラーターンが挟まるので緊張感があってよかったです。おかげで飽きが来ずテンポよく読めました。アイキャッチが赤になるのはいい演出ですね。急に来ると「うげっ」ってなります。
 
△主人公の活躍が少ない
碌に活躍しない穀潰しに見えちゃう主人公だったのは残念だなと思います。周りが際立つのでこういう主人公も無しではないですが、そういうタイプでも一定の活躍はしてほしいなと思います。
 

まとめ

退廃的ながら美しい画風は相変わらず素晴らしいです。リメイクによるブラッシュアップの影響もあると思いますが、あまりの美しさ絶句したシーンもあります。
 
シナリオは短いながらよく纏まっており、そしてなんといっても”狂愛”の表現がいい。そこに至るバックボーンも見事なので、未プレイの方には是非ともプレイして彼女の愛を味わってほしいものです。
 
※以下はネタバレ有感想です。






感想(ネタバレ有)

■上野連続猟奇殺人事件

特筆したトリックがあるわけではないですが、筋道が納得いく作りで好感触でした。印象に残った箇所がいくつかありましたのでピックアップして書いてきます。

1.カニバリズムの扱い方

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弱った部分と同じ部分を食べて補強する考え方は、中国薬膳に同物同治と呼ばれるものがあるくらいなので、深水薫がやったことは全く理解できないものでもないなとは思っていました。
 
無論あくまで薬学なので死んだ子宮を再生するような魔法は使えませんが、七七の言う通り狂人の考えとしては筋が通り過ぎています。この辺りの流れは私の考えと同じだったので読んでいて楽しかったですね。
 

2.主犯:有島一磨

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CV読みとかしていなかったので素で驚きました。頼れる上司感とハードボイルさがかっこよくて好きだったので結構ショックだったのを覚えています。
 
ただ犯人としては残念ですね。読み込みが足りない可能性は否めませんが、彼が犯人であることを推理する材料が少なく唐突感が否めませんでした。
 
妻と前教主殺害も証拠がないので、シラを切り通されていたら恐らく負けているので勝った気がしない。犯人を秘匿するあまり証拠不十分なのは推理ものとしてお粗末と言わざるを得ません。
 

3. 由良の盲目

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実は見えていたというのにはやられました。思い返せばこれを否定する材料は父親の供述という信頼できないものだけです。さらっと由良の日記を出してくるのもニクイ。気づけなかった私に秋五を悪くいう権利はない。
 
忌み目の設定もいいですね。成功者への嫉妬などというしょうもないものを恐れたあまり結果的に呪いに昇華してしまう。こういう滑稽なの私は好きですよ。呪いの本質という感じもします。
 

感想(上月由良)

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愛する人のただ一人になるために使えるものは何でも使い、近づく女を尽く殺して回る妄執と狂気を宿す薄幸の美人。彼女が本作の主役であることは疑いようもありません。
 
まごうことなき狂人なのですが、バックボーンがよく出来ているのでその狂気性を理解できます。狂気に飲まれているとはいえあんな人生を送って精神が壊れきってないだけ大したものです。
 
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彼女にとっては秋五への愛のみが生きる理由だったのでしょうね。唯一人だけ自分を愛してくれた秋五に執着するというのは至極当然な成り行きといえます。だからこそ何不自由なく愛されて生きてきた妹に奪われることなど到底許容できる筈がありません。
 
サクラメント和菜編ではそれが顕著に現れています。どこを切り取っても和菜を殺すという絶対の殺意を抱いています。本来人が抱くべき躊躇が微塵も感じられない逸脱した意思からはある種の美しさすら感じます。
 
しかし彼女の本質が分かるのはやはりサクラメント由良編でしょう。
 

<BadEnd「海の影」>

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このエンディングは彼女の不信というものをよく描いています。秋五からの愛を奪うものは誰であっても許容できない。腹に宿る自分の子供ですら例外ではない。愛する秋五と自分の子供すら信じられない。
 
そのどうしようもない妄執に絶望し入水を選んだ彼女は痛ましかったですが、上月由良の終わりとして相応しく感じます。それがまた一層やるせない。
 
しかし入水に向かう由良の表情を描いた一枚絵は本当に凄まじい。これを見たときあまりにも美しくて言葉を失った。

<GoodEnd「海の光」>

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お互いを信頼する選択肢を選んだ先にしかこのエンディングがないことを考えると、結局のところ愛というものは「信頼」なのかもしれませんね。
 
世界から虐げられ続けた彼女にとって何かを信じることはとても難しかった。人を信じ「愛する」ことができない彼女はそもそも「愛される」ことを信じることができません。
 
自分が選ばれることを信じられないから他の女を消して選択肢を自分だけにする。この思考は自分も他人も信頼できない者の思考です。そしてこの不信こそが彼女の妄執と狂気の根源だと思っています。
 
であれば子供を産み育てることが解決になるのもうなづけます。生まれた瞬間から子供は無条件に親を信頼し必要としてくれます。そして母親がこれを実感できないことはない。この信頼される実感こそ由良に最も必要なことに他なりません。
 
愛する子供のために「信頼」できる自分になるために贖罪という道を選び、秋五と彼らの子供は由良を「信頼」し帰りを待つ。この信頼という名の「愛」に満ちたエンディングが、上月由良という女の救いとしてあってよかった。

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