楽しさであふれた子供の頃の夏に還ることができる作品。
傷ついた者、挫けた者が、勇気を得られる夏のお話。
※後半ネタバレあり
傷ついた者、挫けた者が、勇気を得られる夏のお話。
※後半ネタバレあり
はじめに
無印版は未プレイで、サマポケRBからのプレイです。
攻略順
<実攻略順>
紬 → 静久 → 鴎 → 美希 → 蒼 → 識 → しろは → ALKA → Pocket → うみ
<推奨攻略順>
蒼 → 美希 → 紬 → 静久 → 鴎 → 識 → しろは → ALKA → Pocket → うみ
※好み優先で問題ないですが、うみをラストにするのは強く推奨します。
【感想(概要)】
〇あの日の夏休みの雰囲気
子供の頃には待ち遠しくて仕方なかった夏休み。友達と無心で遊んだり、子供ながらに少し冒険したりといった、大人になった今ではない、輝き満ちた夏の雰囲気が存分に出ています。
〇心の傷に向き合うシナリオ
己が内に抱える心の傷にどう向き合うか、そして何を為すか。それが過程から結果までキチンと描かれており、展開も各キャラ毎に異なるので、どのルートも楽しんで読むことができました。
△記号的なキャラクター
いままでのKey作品からすると大分大人しい気はしますが、奇抜な語尾、ワード、行動でキャラ付けをしている節はあります。気に入らないと何度も出てきてキツイかもしれません。
まとめ
抜群の雰囲気の舞台、心に染みるシナリオ、それらを活かす演出、魅力に関しては、挙げだしたらキリがないほどです。特に郷愁を感じる夏休みの雰囲気は逸脱で、他では中々味わえないと思います。
挫折を経験した人間程、より深く感じ入ることができる内容ですので、仕事に追われる社会人の方にこそ是非プレイして欲しいです。ただ大ボリューム故に勧めにくいのが歯痒いところです。
話が少し変わってしまいますが、私自身メンタルに不調をきたし、現在(2020/8)療養している最中です。そんな折にこの作品に会えたのは幸運という他ありません。進む勇気を与えてくれた本作に溢れんばかり感謝を捧げます。おかげ様でこの夏は本当に楽しかったです。
※以下はネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)
■紬・ヴェンダース
楽しい時間は限りがあり、いずれはお別れをしなければならない。ならば後悔しないように、精一杯遊ぼうというのは夏休みらしいです。そうやって寂寥感が溜まっていく中で、フィナーレとして現れるパリングルスのロウソクは作中屈指の演出で本当に美しかったです。
このルートの総括である、やりたいことは「決める」もの。ツムギを忘れさせないというアイデンティティが消失した、紬だからこそ「決める」ことの大切さに説得力を出せていると思います。
■水織 静久
おっぱい連呼する以外は、頼れて面倒見のよいお姉さん。他ルートでは隙あらばおっぱいをねじ込んでくる狂人ですが、本人のルートでは、しっとりした暗い部分もあって好きです。
他者に価値基準を委ねてしまう性格と、母との関係の解答として、人それぞれ適した距離感があると語られたのは気に入っています。
人間は万能ではなく子に対する親とて絶対の正解はありません。鳥白島は家族のような近しい関係が、絶対善のような雰囲気がありますが、個人的に釈然としなかったので、そこにメスを入れる内容なのが良いです。
後は恋愛要素として、ロマンチックなことをやっていて好きです。何度忘れても毎回恋をするとか、相性が良すぎて甘えちゃうから敢て別れるとか、ポエム作成が捗りそうな素敵さがあります。
■久島 鴎
風来坊のように現れる、育ちの良さそうなお嬢様然とした少女。適当でノリの良い性格ですが、肝心なところは曲げないのは良いリーダー気質です。こんな美少女と冒険できたら最高にきまってますよね。
全ルートの中でも特に面白いと思ったルートです。まずルートに入る前の鍵集めからして面白いから凄いです。まさに一夏の冒険といった感じで、読んでいて終始ワクワクしました。
冒険を共にした、初恋の子の願いを叶えるために、頑張った少年によって病床の少女の夢が叶い、100人を超える友達の和を築くことが出来た。非常に綺麗な構成で、感嘆の息を漏らすレベルです。
そして最後に、7つの海を越えて少年と少女は再会する。これが最高でなくて何が最高になるのでしょうか。ファンタスティックです。
■野村 美希
イカした水鉄砲で変態を狩る島の風紀委員。たまに舌足らずになるのが中々に反則で可愛い。ルート序盤の互いに意識しているのに、もどかしい距離感が好きだったりします。
必然性は微妙ですが、夢世界はインパクトはありました。この辺他のルートの差別化を頑張ったライターの苦悩が見えます。
のみきのように、自分でバランスを取っているつもりでいる人間は、限界を誤魔化して大丈夫だと思いがちなので脆いです。まぁ彼女の場合、島民全体へのコンプレックスなので発露も難しいでしょうし。
外から来た過去を知らない羽依里だからこそ、その愛を信じることができたということなのかもしれませんね。そういう意味では流れが良く出来ているシナリオだと思います。
■空門 蒼
全ルート中最も恋愛色の強いルートだったと思います。互いに惹かれあい壁を感じない距離感になっていく様はグッドです。
羽依里がいたからいままで目を反らしていた、藍に向き合うことができ、羽依里もまた蒼がいたからこそ、水泳にけじめをつけることができた。こういった互いに影響し合う関係は素敵ですね。
作中の重要要素である七影蝶に大きく絡むだけあって、他のルート(ALKA、Pocketを除く)よりも演出に気合が入っていたように思えます。特にこれまでの蒼の気持ちを流すシーンは割と反則ですね。素晴らしかったです。
■神山 識
空腹で行き倒れていた「鬼」の少女。古風な口調で着物で僕っ子とか盛りすぎだろと思っていましたが、ガチで時間を超えてきたとは驚きです。(あの蝶ヤバすぎるだろ)
全ヒロインで唯一心が強い、本作においては異色のヒロインです。生い立ちこそのみきと似通っていますが、彼女は自分の為すべきことに、疑いを持っていません。
識自体は気に入ってますが、シナリオはあまり趣味ではないです。ちょっとのことで死亡者数が減っていくので、過去改変が軽く見えます。個人的にはもっと莫大な代償が必要だと事柄だと思います。
ただ結末がハマグリが届いたに留まっているのは、良い塩梅かなと思います。泡沫のように儚い、それでも確かにあったひと夏のお話。そんなロマンチシズムな余韻に浸れるところが良いなあと感じました。
■鳴瀬 しろは
自分からボッチになりにいっている、スイカバー好きの少女。特に笑顔が魅力的だと思っています。和らくてドキッとします。本作では一番お気に入りのヒロインです。
羽依里が釣ってしろはが料理をするこの流れ良いですね。夫婦になるだけあって、こういった共同作業が映えます。髪をまとめたエプロン姿も可愛くて最高です。(ポニテいい…)
シナリオ的にはある少年と少女の出会いの物語といった感じで、このルート単体では、やや物足りなさを感じます。まぁ、しろははALKAからが本番なので当たり前かもしれません。
それでも課せられた苦難を、受け止めるしかなかった二人が、寄り添い、惹かれあう感じは出ていたように思いますので、導入としてみるには悪くありません。
■ALKA
ReStart、うみの幼児退行の意味が分かるようになっています。こういったノベルゲーならではの仕掛けは大好きです。どのゲームでも一個は欲しいと思っています。(強欲)
積み重ねが浅いとここまでうみのために感じる必要があるか?という疑問が出てしまうのですが、毎ルート同じ屋根の下で暮らしますし、ReStartによる差分の仕掛けもあって、うみを身近に感じさせ、プレイヤーに疑問を抱かせないようにしているのは、上手い構成だと思います。
3人で過ごす夏の尊さ、徐々にくる忘却の恐怖、最後の花火の演出など、ALKAの魅力は枚挙に暇がないほどですが、なかでも自分が生まれてくるときのうみの視点がグッときました。
自分がこんなにも望まれて生まれてきたことが分かる幸福はどれほどでしょう。なのに大好きな母が死ぬ原因が、自分である絶望はどれほどでしょう。その落差は私が味わったことがない程暴力的なものでしょう。
そしてその感情を持って最後の旅に飛ぶ決意をする、非常に好みの展開で、Pocketへの期待が否が応でも高まりました。
成年しろはとの会合から涙腺壊れっぱなしでしたが、一番きたのは識が現れたところです。最後に彼女が助けてくれたことが、たまらなく嬉しかったです。
私はHappy End原理主義者ですので、苦難を乗り越えた上で、起こる奇跡は大歓迎です。無印版は最後の3人のシーンはないようですが、無粋を承知の上であったほうが、私は好きです。
鷹原羽未という少女の頑張りは、縁が再度結ばれるに値することです。彼女の旅の終わりに、惜しみない拍手を送ります。
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