
誠実とは自分が愚であることを知った上で選ぶことである。
※後半ネタバレ有り
制作 :Nutrients(Steamリンク)
ランク:B
攻略順
<実攻略順>
凪編(彼岸花の章 → 睡蓮の章) → ???
※???は凪編クリア後に解放
<推奨攻略順>
実攻略順に同じ。後はあなたのお心次第です。
感想(概要)
×作中用語が分かりにくい
特に「彼岸花の章」で顕著でした。前後の流れである程度は把握できますが、イメージし難いものも少なからずあったので、没入の妨げになっていました。絵を使っての説明がもう少しあると良い感じになる気はします。
〇意義あるダブルヒロイン
本作のヒロインである「サハナ」と「スイリン」の設定はかなり良かったです。対象性のあるどちらも甲乙つけ難い魅力あるヒロインでした。この設定が生きてくる終盤のシナリオは目を見張るものがあります。
〇”誠実さ”を問うシナリオ
本作の特筆すべき点はここにあると思います。作品全体としてのテーマであり、その解答をプレイヤーに理解させる形で示してくる構成はお見事です。
×不足の多いUI
バックログジャンプ無し、10というセーブ数の少なさ、ボイス項目(音量調整、リピート)なし等、インディーズと考えても厳しいものがあります。
まとめ
“誠実さ”の表現方法に関しては言うことがありません。心臓に刀を突きつけられるような感覚を味わったのは久々です。これを味わえる展開を見れただけで本作をやって良かったです。
ただシステム回りは全体的によろしくないですね。フリーゲーム版ならまだしも、Steam化の際にはブラッシュアップが必要でした。この部分は今後に期待したいです。
※以下はネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)
■凪編:彼岸花ノ章

率直に言えばあまり面白くなかったです。江戸末期っぽいですが、イマイチ世界観なを掴めませんでした。そのまま気づいたら終わっていたので「ヤバいの引いたかな…」と思ったくらいです。
ですがこの章は、サハナ、アオイ、“自分で選択することの重要性”を覚えていればいい(公云々は雰囲気で流せる)ので、情報開示に制限がある中でも、印象に残すべき場所はちゃんと抑えてきてますね。
サハナはこの章だけではイマイチ魅力が発揮できていませんが、それでもマサヒデを本当に好きなことは伝わってきます。時化編を考えてなるべくスイリンとフェアになるよう、この章はあえて抑えて描いたようにも感じます。
■凪編:睡蓮ノ章

この章は庶民的な生活基盤が中心でしたので「彼岸花ノ章」と比べてイメージがしやすく読みやすかったです。カイが記憶喪失なのでマサヒデより読者に近かったので物語に入りやすかったです。
無論この章で一番大きいのは明るく健気なスイリンの存在です。記憶をなくしたカイを居候させてくれ、海の恐さを教えて叱ってくれる。彼女のような人物を”優しいひと”と呼ぶのでしょうね。
カイもスイリンも優しさ故に自分の感情を殺してしまう悪癖があります。そんな二人がお互いの気持ちを夕景の海でぶつけ合う様は本当によかったです。やはり言葉にしないと人は分かり合えませんね。
■時化編

まさか2ndOPがあるとは思いもしませんでした。そして示唆されるどちらかを「選択」する展開。良い演出ですね…見たときは胸が苦しくなりましたよ。
本作唯一の選択肢は非常に気合が入っていいです。『選ぶこと』と『選ばないこと』の両方を選択させるこの選択肢からは、読者を殺そうとする作り手の殺気が伝わってきます。
いやはや嬉しくて仕方ないですよ。こういう選択肢に出会うために私はノベルゲームをプレイしていると言っても過言ではないのですから。もちろんプレイした者の責務として選択の結果は示します。
選択
『サハナを選ぶ』『スイリンは選ばない』
サハナルート

彼女を選んだ理由はシンプルに脆いからです。「この女は俺が支えなきゃな」って女には男は弱いものですよ。後は「おかえりなさい」っていって貰えたとき凄く嬉しかったんですよね。本当はこれだけが理由かもしれません。
ですが、この選択をした後に見ることになる、船上で独り泣くスイリンの姿は心苦しかったです。なぜこのような良い子が泣かなければいけないのか。選択しておいてなんですが、やるせない気持ちになってしまいますね…
スイリンルート

本当は『選択しなかった』方を見るのは無粋なのですがそこはご容赦を。
驚いたのは思っていた以上に選択でルートの内容が変わったことです。あちらのルートでは公になりましたが、こちらでは公に関わることすらできない。選択の結果を分かりやすい形で見せてくれるのはいいですね。
このルートの最後に立ちはだかるサハナは非常によくない。地に伏し無様に懇願する姿は画になり過ぎていている。これは嗜虐心を抑えるのが大変でしたよ…
そして同時に実感してしまいました。ここでサハナのことを考えてしまう時点で私にはスイリンを選べないということを。選ばなかった後悔すら味合わせてくれるとは中々にヒドイ演出ですよ。(誉め言葉)
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