プレイ中:幻想牢獄のカレイドスコープ2

サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う- 感想

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制作 :(公式サイト)
ランク:S
 
様々な思想、哲学が盛り込まれたある芸術家を取り巻くお話。
創作物への愛に気づきを与えてくれた本作に只々感謝を。
※後半ネタバレ有
<実攻略順>
真琴 → 稟 → 里奈(優美) → 里奈 → 雫 → Ⅳ → Ⅴ → Ⅴ(藍) → Ⅵ
 
<推奨攻略順>
稟 → 真琴 → 里奈(優美) → 里奈 → 雫 → Ⅳ → Ⅴ(藍) → Ⅴ → Ⅵ
※ほぼ固定ですが下線引いた箇所は逆にできます。変更しても大筋に影響はないので、その時の気分で決めてもいいですが、里奈だけは優美を先にするのがいいと思います。

感想(概要)

〇徐々に明らかになる因果にまみれた過去
過去にヒロインと何の因縁があるのか、主人公には何があったのか、闇の中に隠れている様々な因果が、徐々に明らかになっていくのが、本作最大の面白みだと思っています。特にⅢ章の最後たる雫ルートの収束は脅威的と言ってもいいです。
 
△作品全体として未集束
Ⅵ章にて確かに本作は完結しています。ただⅣ章以降は続編ありきで描かれています。無論その存在は明らかなので、問題ではないのですが、発売までの年数を考えると区切り方、売り方に工夫する余地はあったかなとは思います。
 
〇創作物に対する思想
作品とはどうあるべきかというライターの美学が非常に良く出ています。私個人の美学とも符号する部分が多く好感触です。逆に私の中にある筈の思想がポンポン言語化されていて、気味が悪かったくらいです。
 
×テンポが度々死ぬ
ただでさえ長いのに引用とボカシのせいで冗長化しているのは褒められません。特に引用については、酷い時は引用に引用を重ねるので、自分の言葉で喋れよと言いたくもなる場面もあったりします。
 

まとめ

個人的にはⅢ章までの出来は圧巻です。ヒロイン達との過去の因果が詳らかになっていくのは快感ですらあります。そのシナリオ構成は手放しで褒められるレベルのものです。まぁ要するに好きってことです。
 
ですがⅥ章は作品としてまぁ着地はしてますし、そのオチに納得もしていますが、続編たる「サクラノ刻」をプレイしないと真価を判断できないというのが正直なところです。ですから大層期待させてもらいますよ。
 
最後に感謝をさせていただきます。本作を通して自分が作った物に、思っていた以上に愛を持つ人間だということに気づきました。こんな収穫は滅多にないです。プレイして本当に良かったです。
※以下はネタバレ有感想です。
 
 
 
 
 
 

感想(序章~Ⅲ章)

■序章~Ⅰ章

この辺りはまさしく序盤といった感じで、舞台とキャラクター紹介。そこに潜む謎のばら撒きの役割の側面が強いかなと思います。
 
そんな中で異彩を放つのが御桜稟脚色の「幸福な王子」です。脚色部は比較すれば分かることですが、王子がキスを求める部分ですね。この王子の愛は、不特定多数の誰かではなく、唯一人だけに向けられたものなので、「幸福な王子」の物語の性質とかけ離れています。
 
そしてこの脚色部こそⅢ章で稟が実行していたことに他なりません。この続きはⅢ章にて語りましょう。
 

■Ⅱ章

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本章の良いところは「櫻達の足跡」という本作を代表する作中作の、経緯すべてが章単体に収まっている美しい構成です。
 
前半は明石が何をしようとしているのかで中々焦らされます。情報によってパズルのピースは埋まれども、それが何を示すのか分からない。ですがこのじりじりとした感じ嫌いではありません。
 
何せ最後に遺産の設計図というピースが埋まったとき、全ての点と点が繋がり真夏に咲く桜の全貌が見えるのですから。焦れとはこの快感の前のオードブルなのですよ。
 
そうして作成されたこの”櫻”の作品は、全てが美しさで満ちています。明石の妹達への想いと努力、美術部員達が”楽しく”作る様、草場健一郎が込めた心、その全てがです。美とはかくあるものなのかと思わずにいられませんでした。
 
最後に明石が作品が何のために生まれてくるか分かっていれば十分という、とても大事な言葉を語っています。そうです作品は”望まれて生まれてくる”のです。そして込められた思いを遂行することが、作品にとっての幸福だと私は考えています。
 

■Ⅲ章

稟が直哉を銅像にしないため燕に縛りつけることが本章全体の意義です。そのため本人ルート以外は全部彼女の働きがあります。
 

Ⅲ-Ⅰ:御桜 稟

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意識されたという事実を認識しただけでイってしまう辺り、好きとかそういう次元なのか疑わしい。好感度カンストを通り越してバグの領域。直哉の方も大概で他ヒロインより発情度合いが段違いなので、魂レベルで惹かれあっているってヤツなんでしょうねこの2人。
 
シナリオ全体が事件のあったXデイに向かう不穏な空気の中、「吹という人形」と「火事」これらのピースがそろった時、私は半分BAD ENDを確信していました。仮面が剥がれて表情豊かな彼女が見れてたばかりに、やるせない気持ちで一杯だったのを覚えています。
 
ただ蓋を開けてみればハッピーエンドで困惑したのを覚えています。まぁ罪とは背負うものなので直哉と一生を添い遂げるというのは正しいのですが、あの錯乱状態で納得するにはちょっと物分かりが良すぎますね。何かもう1つ、こちらが納得できる材料が欲しかったです。
 

Ⅲ-Ⅱ:鳥谷 真琴

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秀才の極地。彼女の凄いところは受け手のことをこれでもかというほど考えてるその創作姿勢です。再現性のないものは失敗作。求めた全ての人に平等の品質を届けることは、創作における理想の1つだと思っています。
 
また最善最良の道を行くその姿勢と行動も彼女の魅力の1つです。さらにこれは本ルートのテーマそのものでもあります。彼女は最善最良の道を行き妥協しなかったからこそ、中村麗華に対して勝利を掴むことが出来たのです。
 
ですが彼女の悲願に対してはそうではありませんでした。人事尽くせども天命足りず、2人の天才の顕現という”月”に手が届きませんでした。何故こちらは届かなかったのか、それはやはり天命(運)の介在する予知が大きすぎたのでしょうね。Ⅵ章を読んだ後だと良く分かります。
 
人は手に入らないもの程欲しくなりますが、それを困難と理解し立ち向かうのは勇気ですらあります。「reach for the moon」この言葉が本ルートには相応しいです。
 

Ⅲ-Ⅲ:氷川 里奈

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無垢な白が似合うその裏腹に、孤高で強かった優美の牙を抜き、直哉の博愛の危険性に気づいた、白と真反対の黒いもの抱えている白い傘の毒キノコ。…と本人が思ってるだけで、恋した相手と親友がおかしいだけの恋に臆病な普通の少女
 
事実として優美の強さは健在で、千年桜を跳ねのけた事実がそれを裏付けます。さらに博愛の危険性も恋から単に逃げるための口実に過ぎません。直哉と稟にクソ重い愛のロジックをぶつけられて、ボロボロにされたのは正直可哀そうなぐらいでした。
 
また、このルートは特殊な構成で作られていると思っています。里奈に危険性を付加しておきながら、それを優実を際立たせるための要素にしか使っていないのは驚きです。サンフラールSをググられることを想定しての構成だとしたら大したものです。
 

河内野 優美

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本ルートの主演である牙を抜かれていない狼。月が手に入ると言われても、”好きな人に幸せになってもらいたい”という本当の願いを違えず、奇跡を否定した彼女の崇高な精神は褒められるものです。名は体を表すとはよく言ったものです。
 
里奈と優美の関係も決定権が里奈にあると見せかけて、最終的な決定権は優美にあったという逆転が個人的な見解です。
 
千年桜の否定は言うに及びませんが、Marchenルートの場合も、”中原中也の本を投げ捨てる”=”滅私奉公が出来ず、里奈を受け入れてしまった自棄”と考えられて面白いです。
 
最後に丘村くんと出会えたのも個人的には奇跡だと思っています。本作では悪い意味ばかりで使われがちですが、こういう起こるべくして起こる奇跡があってもいいんじゃないですかね。
 

●Ⅲ-Ⅳ:夏目 雫

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作品の中核に存在する直哉、稟、雫、健一郎の過去に何があったのか、全てが明かされるこのルートを私は「サクラノ詩」という作品の実質的な最終ルートと捉えています。正直トチ狂った面白さでした。
 

<雫について>

このルートで語られたことを考えれば、雫が直哉を好きなのは必然ですらあります。まずベースになったのが稟なら影響を受けるのはやむなしです。野外オマンコくぱぁする淫乱さも、あれがベースになっているのであれば理解できます。
 
ですがベースはあくまでベースに過ぎません。彼女が好きになったのは救われたのが大要因です。こういうとき15億というのは非常に分かりやすい指標ですね。実に狂った額です。
 
彼女からすれば、千年桜の負い目がある健一郎は分からなくもないです。ただ直哉が何故ここまでするのか理解できないでしょう。その身に起きた幸福に理解は及ばず、ただただ涙するしか他にすべは無かったのです。
 
もはや好きとかそういうレベルではないです。雫にとって無条件に彼のためになるしか他に報いる方法がありません。そう考えれば女優になったのは彼女なりの付加価値の付け方だったのかもしれませんね。有名女優の自分の体なら少しは返せると考えてもおかしくはないです。
 

<健一郎について>

彼は幸福な親であったと断言しても良いでしょう。死に土産として「桜七相図」は余りにも出来が良過ぎています。そして自分が成せなかった雫の救済も達成した。こんな親孝行が他にあるでしょうか。

「桜七相図」は、まさしく”墓碑銘の素晴らしき取り違い”。最上の生前葬です。だからこそ六相図が「横たわる櫻」の流用なのは頂けません。ここを作らず何のため10年以上費やしたのかと言いたいです。もし六相図があれば落款印を刻むシーンは不朽の名シーン足りえたでしょう。
 

<稟について>

その才能は示唆されていましたが、まさか感情を見れる共感覚を持ち、空に絵を描く次元とは思いませんでした。その名が示す通りまさしく天稟の才の持ち主としか言えません。

そしてここでようやく彼女の根源が分かりました。それは直哉の才能が刻限に至る前に、同レベルでの共作をすること。ただそれだけであると。そして記憶を失っても、直哉の危うさは直感で理解していたから、他の娘とくっつけようとしたのでしょう。
 
この解釈は合っているかはどうでも良いです。この時を以てただ愚直に直哉だけを想う、彼女の味方でいようと私は決めたのですから。

感想(Ⅳ章~Ⅵ章)

■Ⅳ章

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別に無くてもいいかなと思った章ですが、夏目にとって草薙の存在を改めて考えられる章ではあります。禍福は糾える縄の如しという言葉があるくらい、幸福と不幸にはバランスがあると考えている人は少なくないと思われます。
 
水菜は攫われるその時まで健一郎の手を否定し、自分を生贄にし続けました。殺し合いの防止や藍のためというのはあるとは思いますが、突然降りかかった身に余る幸福に対して、彼女なりのバランスの取り方だったのではないでしょうか。
 
道理を曲げて奇跡を発動する千年桜と過剰な幸福を与える草薙の男。受ける側にとっては、果たしてそこに違いはあるのでしょうか。私には大した違いがあるようには思えません。
 
話は変わりますが、水菜と優美には何らか接点があると思っていました。単に見た目が似ているのもあるんですが、卵焼きが同じというのがどうも頭から離れません。本作中には何も出てきませんが、続編をやる際には頭の中に置こうとは思っています。
 

■Ⅴ章

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本章においては主観の違いというものがテーマになっている気がします。特に直哉と圭については、天才の相違という形で色濃く書かれています。
 
圭は身体を削り、直哉は心を削って(幼稟談)絵を描きますが、健一朗曰く心と身体は同じらしいので優劣はないはずです。にも関わらずそこに歴然たる差があったのはなんででしょう?
 
あるとすれば天命(運)の差ではないでしょうか。人事を尽くした後にはそれしかありません。おそらく圭は直哉よりそれを多く使えてしまったのでしょう。だからこそ代償に死という運命を与えられた。
 
事故に合いそうな子に遭遇する場面が仮に100回あるとしたら、圭は100回とも同じ選択をするでしょう。だからどうしようもないのです。
 
まぁ言ってる私が言うのもなんですが、そう考えるとなんとなく辻褄が合うからそう思っているだけで、個人的にあまり好きな考え方ではないです。運にロジックを当てはめるのはなんか無粋です。

<直哉と稟の美についての対話>

読んでる最中は引用の連発と、内容が正直不愉快だったところもありブチギレそうでした。私は数式は宇宙の真理そのものだと思っていますが、美は個人の主観で変わるものだと思っています。なので数を神や美などという曖昧模糊なものと同列で語られること自体面白くないです。

<長山 香奈>

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名言しか吐けない女。彼女の絶対的な主観主義は聞いていて気持ちいいくらいですね。こと絵に対する姿勢は手段を択ばない分真琴より強くすらあります。己が愛を貫いてかつて内にあった世界を取り戻せることを祈っています。
 

■Ⅵ章

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突然の10年ほどのターンジャンプに加えて、新キャラと成長した姿の連打に大分混乱したのを覚えています。ですがⅤ章がきつかったせいか脳が再生するくらい楽しかったです。一回り下の女の子にモテるの楽しい…
 
個人的には草薙直哉という人間が本作を終えた今となったも分かりません。まさか死ぬほど準備することを当たり前だと思い、天命の介在する余地を極限まで削るやつだとは思っていなかったです。
 
そういうのは香奈みたいな人間の思想だとは思っていたのですが、逆に彼女は運を勘定に入れていて少し残念に思いました。彼女は自分の世界をちゃんと追えているのか心配です。
 
またブルバキによって死んだ「櫻達の足跡」を蘇生させた光の芸術は中々オツなものです。あれはまさに死者蘇生の芸術。かつて千年桜と布瑠の言により、それを成就させようとした稟に見せる作品としては、これ以上無いように思えます。(でもこのルートのなおくんは知らない筈なんだけどなぁ…)
 
まぁいずれにせよ直哉という人間が分かるのは2人の因果交流が実現するときでしょう。今から楽しみにしていますよ。
 

●夏目 藍

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それではENDヒロインたる彼女について語りましょう。最後に語るに相応しいヒロインです。なのでⅤ章では何も語りませんでした。
 
彼女が見出した草薙の男の加福に対する解答は、常に苦境にいる彼らの帰る場所になり、そして無条件に愛するというもの。草薙と夏目の全てを知る彼女だから得られた解答。故に彼女はⅢ章のヒロインにはなれません。彼女の愛は縛らないものなのですから。
 
時に平仮名というものは音節文字です。本作風に言えば詩(し)ではなく詩(うた)である、音を表す文字体系です。藍が愛と同じ音なのは説明する必要すらありません。そして平仮名において、”あい”より前には何もありません。成程返るべき場所の人として、これ程相応しい人もいないでしょう。
 
ですから私が夢浮坂で振り返る彼女を見て涙したのは、仕方のない事なのです。

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