
制作 :ウグイスカグラ(公式サイト)
ランク:A
「魔法の本」により展開される清濁合わさった恋物語。
心を抉る劇的な展開はいい意味でボロボロにさせてくれる。
※後半に致命的なネタバレあり
【攻略順】
<実攻略順>
理央 → 妃 → 夜子 → かなた → True
<推奨攻略順>
所謂脱落形式です。個別を先に回収することを推奨します。
【感想(概要)】
〇驚きに満ちたシナリオ構成
登場人物の行動の多くに、必然性が付与されている美しい構成でした。伏線は明かされたときに納得できなければ意味がないですが、本作はその点見事なものです。回収されたときのインパクトも絶大でした。
△作品に都合のいい設定
作中設定が作品に都合がいいのは当たり前ではあるのですが、後出しの設定が多かったり、役割の要素が強すぎたり、白ける人がいるのも無理はないかなと思います。正直私も一部肯定できない箇所があります。
〇読み進めるのが辛い、心に”クル”物語
各々の弱さと利己的な行動から拗れた鬱々しい物語は、中々心を抉ってくれました。なんというか”どうしようもない感”が強いんですよね。それでも面白くて読みやすいので、心を摩耗しながら読めてしまう。とっても質が悪いですね。(誉言葉)
【まとめ】
ここまで読み物に翻弄されたのは久々で楽しかったです。好みのテーマである、心の弱さについても良く描けていたのも良かった点ですね。総合的に満足しています。ですが体調が悪いときには読みたくないですね。鬱を引きずりそうです。
後は魔法の本の名称もいいですね。非常に中二心をくすぐられて毎回どういう名前が出てくるか楽しみでした。こういうセンスと遊び心大切にして頂きたいです。
来年2月に発売の新作は、本作を髣髴とさせる要素が多分にあるようなので、我ながらいいタイミングでプレイできました。本作は気に入りましたので、新作も買いたいと思います。
※以下は致命的なネタバレ有感想です。
感想(ネタバレ有)
■作品全体として
本作は、悲劇の引きこもりの少女である遊行寺夜子が、失恋という痛みを以て前を向けるようになる“成長譚”だと思っています。最後の選択肢も物語の締めも彼女が担当しているので、夜子が主役だと捉える考えがしっくりきます。
彼女の弱さは嫌というほど描写されていたので、その成長を感じられる告白のシーンは作中でも一、二を争うぐらいには好きです。最初は無能の癖に生意気なガキだとすら思っていましたが、最後までプレイした今では夜子が一番好きです。
ホント失恋した彼女は嫌になるくらい魅力的です、これは瑠璃にはもったいないというものですよ。
また、プレイヤー視点≠主役なのは本作の珍しい特徴かなと思います。ヒロイン選択型の恋愛ADVではこうはいきませんが、本作は実質1本道の読み物なので、それでも問題ないんですよね。エロゲとしては型破りですが、こういう個性的なのは大歓迎です。
ただ、もし本作のメッセージとして”引きこもってないで現実を見ろ”と伝えたいのであれば、それは余計なお世話です。忘れるために見てるのですから、それを否定しないで欲しい。
■印象強い場面
何といっても7章「ブラックパールの求愛信号」の魔法の本「伏見理央」「月社妃」のシーンが最も強烈でした。このとき膝から崩れ落ちるっていうのは、こういうことなんだなぁと、その言葉の意味を真に理解しました。
「伏見理央」は、それまでの理央の行動すべてが腑に落ちました。あのキャラ付けとしか思わない言葉使いにも意味がちゃんとあったのは、本当素晴らしい構成です。感嘆の息も漏れるというものです。
「月社妃」はここでは“初めまして”に困惑するだけでしたが、最後までやった今では姿形だけでなく記憶さえ同じでも別人と捉える彼女らしい言葉だなとも思います。なにより彼女のそういう考え方は好きです。やはりスワンプマンは別物なのですよ。
■日向かなた
率直に言って日向かなたというキャラクターの扱いには不満があります。予め言っておきますが、私はかなたちゃん大好きです。辛いシーンでは、“かなたちゃん助けて…”と何度口にしたか覚えてないくらい、彼女の太陽の如き笑顔に依存してました。
では具体的に何が不満かというと、瑠璃に対する彼女の絶対的な愛が理解できないのです。無条件に瑠璃を愛するという設定が、夜子がフラれるのに都合がいいからそう設定したように感じ、「キャラとしての扱いが杜撰じゃない?」と思ってしまったんですよね。
例え殺されてもいいという狂気とも呼べるべき愛は大いに結構です。ですが私が知りたいのはその愛に至った源泉なのです。これほどの狂愛に至ったのは、魔法の本のせいなのか、それとも生来故のものなのか、それすら分かりません。
こういう心の根幹に関わるところは、キャラクターを理解する上でとても大切なので、納得がいくような何かしらの描写が欲しかったです。
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