プレイ中:幻想牢獄のカレイドスコープ2

さくらの雲*スカアレットの恋 感想

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制作 :きゃべつそふと(公式サイト) 
ランク:S
100年の時を超え、歴史の歪みに挑むSFミステリー。
シナリオに驚きを、キャラクターに愛着を感じる2020年の傑作。
※後半には致命的なネタバレを多く含みます。

攻略順

ありません1本道です。

感想(概要)

〇常識を逆手に取る仕掛け
前作であるアメインジグ・グレイスで猛威を振るった、ライターであるトム氏の常識外から虚をついてくる手腕は本作でも健在です。空いた口が塞がらないという諺を身をもって経験しました。
 
〇連鎖するシナリオ
謎が謎を呼びチェーンするシナリオは次の展開が気になり、高いモチベーションで読み進めることが出来て楽しかったです。何気ない動作が根本の謎に掛かっていることもあり、本当に油断なりません。
 
〇丁寧に描かれた人の輪
サブキャラクターも含め誰もが作中で生き、人の輪を構成する上で、欠かせない役割を担っています。そのおかげで作品世界に奥行きを感じられ、程度の差はあれど、どのキャラクターにも愛着を持てました。
 
〇性癖を感じるエッチシーン
強いフェチズムを感じられ、役割が持てたのは望外の喜びでした。人好き好きだとは思いますが、快楽が極まってくると卑語連打ではなく、語彙崩壊になるのも趣味に合ってます。(でもこんなマゾだったかこのライター?)
 

まとめ

前作の完成度故に、期待値がとても高い作品でしたが、見事その期待に応える出来なのは、あっぱれという他ありません。
 
瞬間的なインパクトであれば前作に軍配があがりますが、作品の総合的な美しさ、完成度の高さは本作の方が上だと思っています。
 
自分なり根幹の謎は何かについて推理をしながらプレイしましたが、前作同様看破できず騙されました。こうも綺麗に騙されるのはもはや快感です。次回作があれば、また黙されたいと思っています。
 
※以下は致命的なネタバレ有の感想です。
 
 
 
 
 
 

感想(ネタバレ有)

<第1~4章>

3章までの展開では、探偵助手としてこの世界の雰囲気を楽しんでました。世界観がするすると入ってくるあたり、やはりテキストレベル自体が高いですね。
ただ後藤新平の暗殺は、実在の人を殺していることもあり異質なものを感じ、これは震災後に大きな動きがあるな…と考えを巡らせていたものです。そこであの4章の登場です。綺麗に不意打ち決められてパニくりました。
 
全く想定しなかった展開と、情報の暴力で夢中になって読み進め、銃を握る遠子嬢に困惑したところで、タイトルバック&枝を辿るの解放。今思い出してもこの4章は素晴らしいです。ファンタスティック。

<第5~6章>

■ヒロイン:不知出 遠子

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帝都でも有数の富豪たる旧家のお嬢様。好奇心旺盛で未知に目を輝かせる姿は無邪気なものですが、令嬢らいし根回しの上手さなど、中々したたかな一面もあるお方です。
 
シナリオギミックのため、裏側の弱い側面が強調されていますが、言葉は知らずとも、幼き頃からノブレス・オブリージュを実行できている誉れ高き人です。それが分かるのが10章だというのが可愛そうですけどね。
 
個人的にはヒロインの中で最も性的な役割が持てました。深窓の令嬢に淫蕩の悦びを刷り込む征服感ってやつは凄いですね。特に4シーン目直前のSEXをねだるところなんか”堕とした”感が強く最高です。
 

■シナリオ

遠子との自然主義シーンは、彼女がヴァイオリン盗難に絡んでいるのは明白だったので、その理由が気になって楽しめなく残念でした。この辺もう少し調和して欲しかったところですね。
 
怪盗ヘイストの真相も、見ず知らずの泥棒であるリーメイに、収集品を譲渡する遠子の母親の心情にイマイチ納得がいかなくて、ご都合主義的に感じました。今際の際なら彼女の気持ちが分かるんですかね。
 
率直にいってお話的には不満がある章ではありましたが、まぁ謎の仕込みにあたる章なので、仕方ないところはありますね。

<第7~9章>

■ヒロイン:水神 蓮

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浅草下町生まれ下町育ちの女学生。大正時代らしい奥ゆかしさを感じる娘ですが、それでも何かと色恋に興味のあるお年頃。
 
蓮との恋愛は距離間が縮まっていくことを実感できて良かったです。司という未来人の朧げさに焦点をあてて、大正で生きるには?という話を展開できたのは、未来人であることを知らない彼女ならではです。
 
エッチシーンでは一転してS気の強い側面されたのは驚きです。ライターの性癖が伺い知れるサキュバスのごとき搾精っぷりですが、精神的な繋がりを重視したポリネシアン・セックスを最後にしたのは、中々ニクイ選択です。2人の関係が本物であるというのが伝わってきます。
 

■シナリオ

なんといっても印象に残ったのは、ランドルフの話ですね。標本は実在するからそこをゴールにする流れは確定だったとしても、話の運びが丁寧で作中の人物の行動に感情的矛盾がありません。
 
本筋に大きく絡む話ではないですが、1つの話として単純に質が高かったです。ペットの死というのは間違いないですね。グッとくるものがあります。
 
バウムクーヘンの話はランドルフの話と合わせて、伏倉万斉という男の有能を示し、モノポールの話は、偽札の謎を深めます。これらの話も楽しめましたが、ここでの仕込みが芽吹くのはまだ先ですので、驚きという点ではほどほどでした。

<第10章>

■ヒロイン:メリッサ

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不知出家に仕えるヴィクトリアン・メイド。非常にできたメイドですが、お茶目なところもある可愛い娘です。またメイド服も実に”理解って”います。露出が多いなど花拳繍腿です。
 
彼女の本質的な魅力は、包容力にあると思っています。辛い苦境において支えてくれる彼女は良妻の素質があります。欲を言うならば、純粋な彼女とのデートがもう少し欲しかったところです。
 
10章は難解事件ですので、頭を悩ませている最中に、彼女の豊かな肢体で甘く肯定されることは、抗い難い暴力的な魅力と言えます。司君が腰をへこへこするのも無理ないなと思いました。
 

■シナリオ

最初から今までとは毛色が違い期待感が膨らんだことは記憶に新しいです。何せアララギも含めたオールスターによるミステリートレインですから、面白いことは確信していました。事実ここからの面白さは加速度的です。
 
このミステリートレインに私も挑戦してみましたが、いやぁダメでした。それでも推理すること自体楽しかったので、挑戦してよかったです。何よりもこの章でしかけられた2つのミスディレクションは本当に見事です。
 
1つ目はメリッサがカヤノであること。遠子との不仲はリーメイ関係かと、こちらのこれまでの知識を逆手にとり、さらに助手ポジションに据えることで候補から外す。見事な手腕です。
 
2つ目はもちろん千里眼の才女が本物だと分かるシーン。千里眼は「偽」という”一度出た結論”と”現実の常識”、この2つを突破して千里眼は「真」にたどり着くのは至難と言えましょう。
 
そしてそれに負けず劣らず驚いた要素がもう1つあり、カヤノであることを明かされる前にエッチシーンが2つありますが、痣が普通に描かれているのに全く気づかず、圧倒的な敗北感を覚えました。

<第11章~エンディング>

■ヒロイン:所長

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閑古鳥が鳴く事務所で私立探偵を営む、金髪のイギリス人。推理能力にこそ結び付きませんが、直観力、交渉力が高い非常に聡しい人です。常に自身に満ちた彼女は非常に魅力的で作中何度も惹かれました。
 
本作のヒロインは4人共素晴らしいですが、フェイバリットは彼女です。口癖の初歩的(エレメンタリィ)も、声に出して読みたいワードNo1です。
 
彼女については、やはり司の謎を暴くシーンが特筆すべきシーンでしょう。あのときの彼女は、まさに大正のシャーロック・ホームズです。

そして全てを理解した上で、全てを受け入れた彼女の笑顔と言葉は、司にとって値千金という言葉でも、まだ足りない程の価値があるでしょう。
 
またSEXにおいてこの2人の相性の良さは異常といってもいいレベルです。何せ互いを言葉だけでイかせるという共支配ともいうべき、驚異的な領域に到達しているので、こちらが入り込む隙がありません。
 

■シナリオ

◇司の抱える謎
後から考えれば疑問に思う余地などいくらでもありました。
  •  なぜ殺し屋を制圧できるのか?
  •  なぜ手袋を外した絵がないのか?
  •  なぜ絵や字が下手なのか?
  •  なぜ現実にないテロ事件を防いでいるのか?
  •  なぜスカイ”タワー”なのか?
「一体いつから──風見司が令和から来たと錯覚していた?」
 
有名なさる漫画の名言をパクらせてもらいましたが、私が受けた衝撃を説明するのに最も適当な表現だと思います。特に右手の運動のフェイクは脱帽です。天才以外の表現が思いつかない。
 

魔人との決着

瞬間的な風速で言えば上記のシーンが最強ですが、こちらも素晴らしいです。
 
親殺しのパラドックスを発生させて消滅させたと書けば、壮大に見えますが、実態はただ女の子の約束をすっぽかした男がフラれただけです。美少女ゲームの悪役が負ける理由としてこれ程相応しいものもありません。
 
タイムマシンを作らせようとして時点で魔人は詰んでいたのです。「人生を無視したロジックは成立しえない」まさにその通りですね。
 

エンディングについて

未来に希望を見出す以上、離別ENDになることは不可避です。IFであろうと大正に残る可能性が残るのは、無粋の極みですので、選択肢なく未来に戻る一択なのは、非常に良かったと思います。
 
そして本作における「桜の樹の下には屍体が埋まっている」の私なりの解釈を最後に述べたいと思います。
 
100年を超えても在り続け、歴史を観測し続けた”彼”には、未来のために奮闘した先人たちの営みが在るのかもしれません。
 
もしそうならば、花見とは実にオツな催しではないでしょうか。なにせ過去の営みを眺め、今を生きる人と、未来を語らえるのですから。
 
だからこそ、読者である我々も最後のエンドロールという花見で、彼女達の軌跡を、司とマリィのこれからを知れた、そう考えると実に“浪漫チック”です。大変美しい結びでした。

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